キョジャッキー、一歩踏み出す

さて、何とか東京に帰り着き、日も暮れたころ、下宿の近くの行きつけの定食屋に顔を出した。店には、杉さんご夫妻がすでに晩酌を始めていた。この杉さんは、おいらになにかと様々な情報と知識を授けてくれる健康法の先生、というより師匠のような方だった。もともとは絵描きだったらしいのだが、六十歳の今では近所で鍼灸などを生業としていた。奥さんの年は三十代半ば、色白でぽっちゃりとした美人だった。

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杉さんはとっても勘がいい。おいらの顔を見るとすぐに、「キョジャッキーよ、なんかあったんべ」と何弁かわからない方言で聞いてくる。生ビールを注文しながら、大阪のホテルでの一件を話すと、「ふーんむ、おまんは、運がええ、しかし...」と微妙なところで黙り込んだ。「しかし、な、なんでしょう?」焦れて聞き返すと、杉さんは何も答えず、「ところで、今度滝行に行くんだが、一緒に来る?」と聞いてきた。

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聞けば、年に数回はこの滝行に行くらしい。おそらく、おいらの一番の欠点のメンタルの弱さを杉さんは見抜いたから。思い返せば、おいらはいつも心が暗く、ネガが強く、ウジウジ悩んでいた。いつも明夫に名前負けしていた。しかし、今回の臨死体験で、おいらは一つの答えをつかみかけていた。彼女にフラれるのも、便秘なのも、身体が虚弱なのも、何もかも、実はおいらの「こころ」が悪いからなのではないかと、気づき始めていたのだ。今までは、まず体ありきだったのだが、本当はそうではなくて、まずこころありきのはずだ。もちろん今のところ確信はない。たぶん、そんなおいらを見かねて杉さんは、滝行に誘ってくれたのだろう、と思う。

キョジャッキー

キョジャッキー

大学生で1年留年中の身です。身長169cm、体重50kg。慢性的な金欠のため、日々様々なバイトおよび危ない?仕事に精を出す日々ですが、頑張っていきます!